やすかろどんの火の玉
挿絵:おべんどん
 どんより曇っていて、風という風もなく、ほろぬくい大氣は静けさをかきたて、まさに田園の初夏にふさわしい夜であった。「わっ、あれは何だろう」思わず声を立てた。人の頭より大きい火の玉が、たんぼに浮いて赤々と輝いている。「あっ、火の玉だっ」立ちすくんでしまって、叫んだつもりの声も声になっていない。静かに動いていた火の玉は、やがてとまり、白々と輝いている。動き出したかと思ったら夜空高く飛び上がり、大きく弧を描いて北の方に飛んで行き、木の上に降りて輝いている。
  閉じる 次へ